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メタボリック症候群と腎臓

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メタボリック症候群と慢性腎疾患(CKD)の関係

2008年4月からメタボリック症候群(以下メタボ)に的をしぼった「特定健診」がはじまりました。40歳から74歳までの全国民を対象に、体重、身長、腹囲(臍まわり)の身体測定と血圧、血糖、血中脂質(HDL-コレステロールと中性脂肪)を測定して、メタボと判定されたら、生活習慣の見直しをすすめられます。そのための支援を医師、保健婦、管理栄養士が行うことになっています。その根底にある考えは、われわれの体では、内臓脂肪がつくっているさまざまなサイトカインとよばれる物質が血圧や血糖を調節していて、過剰な内臓脂肪は悪玉サイトカインをつくり、高血圧、糖尿病、動脈硬化をおこし、脳梗塞、心筋梗塞、透析など寿命を縮める重大な疾患に至るというものです。そして、特定健診は国民をメタボのリスクに応じて階層化し、生活習慣(食事、運動、タバコ)を見直し、病気を予防しようとするものです。国家による「壮大な実験」ともいえます。 問題は国民がどこまで自分の飲み食いや運動などの生活習慣を自己管理できるかということです。これまで日本の医療は、病気になれば医者になおしてもらう「おまかせ医療」でした。メタボ健診ではじめて医療の世界に「自己責任」が登場するわけです。

◆メタボと慢性腎臓疾患(CKD)の関係◆
一方、慢性腎臓疾患(CKD)は慢性(3カ月以上)の蛋白尿があるか、または腎臓の機能低下(血清クレアチニンから計算した糸球体濾過値が60ml/min 以下)がある状態をさし、その腎機能によってステージ1から5までにわけられます。透析患者は5D(Dialysis)となります。CKDは末期腎不全に進行するというリスクと心血管疾患を起こすという2つのリスクがあります。現在わが国の透析患者は約30万人に達し、年間約3万人が新たに透析に入っています。また、CKDはそのステージがすすむにつれ心不全、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血など心血管疾患が高頻度でおこることが分かってきました。透析患者の原因疾患の多くは糖尿病(44%)、次いで慢性糸球体腎炎(27%)、腎硬化症(10%)となります。また、メタボ患者ではCKDが約2倍と多いことも明らかになっています。メタボを早期に診断して生活習慣を是正して、高血圧や糖尿病を予防することが透析患者を減らすことにつながると期待されます。
以上述べたように、特定健診は国民が自己責任のもとで生活習慣を自分でコントロールして病気を予防するという画期的なプロジェクトですが、あくまで内臓脂肪=悪の根源という仮説にたっています。CKDの大事な指標である尿蛋白やクレアチニンまたldl-コレステロールが項目に入っていないのは問題です。明らかな悪=喫煙はもっと厳重に禁止すべきです。ウエスト88cmの非喫煙男性より、80cmの喫煙男性のほうがはるかに心血管病のリスクは高いのです。すなわち我々の寿命を縮めるリスクは多種多様であって、それらを統合的に数量化することはまだまだ困難であり、メタボはそのひとつのものの見方(切り口)であるに過ぎません。国もメタボを減らすために動いていますが、人口当たりの疾患罹患率などをみながら特定健診は修正を重ねてゆくべきでしょう。メタボ健診が今後一人歩きをしないように十分注意をする必要があります。

表 特定健診の指導対象者【40歳~74歳】
A 腹囲(へそ周り)男性85cm以上 女性90cm以上 または
 BMI(体重Kg÷身長Mの2乗)25以上
B 追加リスク
1 血糖(空腹時100mg/dl 以上)
2 脂質(中性脂肪150mg/dl以上 またはHDLコレステロール40mg/dl 以下)
3 血圧(収縮期130mmHg または 拡張期85mmHg 以上)
4 喫煙歴
・A+Bのリスクの数+年令により保健指導(動機づけ支援)

医療法人博樹会 西クリニック 
名誉院長 西 忠博