慢性腎臓病
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慢性腎臓病はCKD(Chronic Kidney Disease)と呼ばれ、慢性に進行する全ての腎臓病の事を言います。進行すると慢性腎不全となります。患者さんの数は年々増え続けており、新たな国民病の一つと言われています。その理由の一つとしては、CKD発症の原因には様々な要因がありますが、主に高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病がかかわっている事と、また社会の高齢化が挙げられます。加齢とともに身体機能は低下しますが、腎臓も例外ではないということです。
尿の泡立ちがみられたら?(2025/09/09)
尿の泡立ちの話題は、なんと、古代ギリシャ時代にさかのぼり、医学の父といわれたヒポクラテス(紀元前460年頃生誕から紀元前370年頃死去)は、尿の表面にできる「泡」と腎臓の病気に関係があることに気づいていたとされています。
尿の中にタンパク質があると尿が泡立つことがあります。正常な方でも、朝1番の尿はタンパク質が混じることがあるので、泡立つことが多いです。 一方で、常に尿が泡立っている場合は、一度腎臓内科を受診し、腎臓の機能をチェックしてもらいましょう。
尿の泡立ちの原因について、以下の5タイプに分類されます。
- 一過性の泡立ち
- タンパク尿(腎臓病)による泡立ち
- 糖尿病による泡立ち
- 尿路感染症による泡立ち
- その他の病気
1.一過性の泡立ち
多くの場合、尿の泡立ちの原因は一時的なものです。健康な方でもよく見られる現象で、心配する必要がないと考えられます。主な原因は以下のとおりです。
| 水分不足 | 尿が濃くなることで泡立ちやすくなる |
|---|---|
| 排尿の勢い(物理的な泡立ち) | 勢いよく尿がでると、空気と混ざって泡が生じる |
| トイレの洗浄剤 | 洗剤の成分と尿が反応して泡が立つことがある |
一過性の泡立ちは数分以内に自然と消えるのが特徴です。十分な水分を摂っても、尿に泡立ちが続く場合は、腎臓内科を受診しましょう。
2.タンパク尿による泡立ち(化学的な泡立ち)
尿中に、石けんのような性質(界面活性作用)を持つ物質が多く含まれていると、泡ができやすくなります。特に重要なのがタンパク質です。
腎臓は、本来、血液中の大切なタンパク質が尿に漏れないようにフィルターの役割をしています。腎臓のフィルターがうまく働かなくなると、血液中のタンパク質が尿中に漏れ出てしまう「タンパク尿」が現れ、きめ細かい泡が立ちやすくなり、その泡は長時間消えにくいのです。
3.糖尿病による泡立ち
糖尿病になると、血糖値が高くなります。高血糖状態が続くと、腎臓に負担がかかり、尿に糖が漏れ出る「尿糖」という状態になります。尿中に糖が排出されることで、尿の性状が変化し、泡立ちやすくなることがあります。糖尿病は初期段階では自覚症状が乏しいので、尿の泡立ちが、医療機関に相談し、初期診断のきっかけになることがあります。
4.尿路感染症による泡立ち
尿路感染症は、細菌が尿路(腎臓→尿管→膀胱→尿道)に侵入し、炎症を起こす病気です。尿路感染症になると、尿にタンパク質や白血球が増加し、泡立ちやすくなります。尿が濁ったり、血が混じったりする(血尿)こともあります。尿路感染症は自然治癒が難しいため、早期に医療機関を受診し、治療を受けることが重要です。
5.その他の病気
多発性骨髄腫は、骨髄中の形質細胞(抗体をつくる細胞)が異常増殖する血液のがんです。異常なタンパク質(Mタンパク)が体内で作られるようになり、尿中に排出されることで尿が泡立ちやすくなります。
慢性腎臓病の診断方法
eGFRの測定によってCKDの診断を行います。eGFRとは血清クレアチニン値をもとに糸球体濾過量を推定されるものです。糸球体濾過量とはフィルターの役目をする糸球体が1分間の間にどれだけの血液をろ過して排泄する能力示す指標で、つまりは腎臓の働き具合を調べる方法です。
eGFRの検査結果が60mL/分/1.73㎡未満の場合はCKDを疑います。これ以外にも尿検査の際に尿に含まれる蛋白量、画像診断や血液検査等の病理診断で腎障害が明らかな場合にもCKDを疑います。
これらの状態がどちらか、あるいは両方とも3ヶ月以上続く場合はCKDと診断されます。CKDは数値毎に5段階にステージ分けされており、ステージ1を最も軽症とし、ステージ5への移行で腎臓が殆ど機能しない末期腎不全となり腎代替療法が必要になります。腎代替療法とは腎臓そのものの提供を受ける腎移植(献体腎移植、生体腎移植)、腎臓機能の代わりを担う人工透析療法の2つになります。
慢性腎臓病と末期腎不全
CKDは初期ではほとんど症状がありません。初期の段階でCKDを発見するにはeGFRや尿検査等の治療症状が現れる時には病気がなり進行している可能性もあります。以下は代表的な症状です。
- むくみがある
- 尿が濁る、泡立つ
- 就寝中、尿意を感じ何度もトイレに行く
- 慢性的な疲れ、疲れやすいと感じる
- 立ちくらみやめまいを起こしやすい
- 食欲低下
また、腎臓は、赤血球の産生にもかかわっており、腎機能低下により赤血球が減る為、貧血が起きやすくなります。したがって全身に酸素を送ろうとする心臓や血管に様々な負荷がかかり、心筋梗塞や脳卒中、心不全といった重篤な循環器系疾患につながる可能性があります。また、近年では認知症を発症しやすいということも分かってきています。このような腎機能低下がさらに進行すると、いよいよ末期腎不全という状態となります。
末期腎不全と診断されたら
進行を防ぐことができず末期腎不全と診断されてしまったら?残念ながら機能を失ってしまった腎臓は元に戻す事はできませんので腎臓機能の代わりを果たす腎代替療法が必要になります。
日本では、多くの患者が人工透析療法を選択され、今、日本には約34万人もの透析患者さんがいて、毎年新たに4万5000人の方が透析を始めています。人口当たりの有病率では高いですが、これは日本の透析医療レベルが高く、透析しながら長生きされる患者さんが多いこと、欧米などに比べ日本ではハードルの高さから腎臓移植が行われるケースが少ないという背景があります。
末期腎不全への進行を防ぐためにも初期の段階での発見と治療が重要です。
血液透析とは
最低週3日、透析設備のある医療機関に通院し、1回につき最低4~5時間、血液透析を受けることになります。急性腎不全であれば、1~2週の血液透析を経て改善することもありますが、末期腎不全の患者さんは、生命維持のために透析などの腎代替療法を受けていただく必要があります。腎臓が365日、24時間行っている働きを人工的に補う治療ですから、日常生活を送るうえで大きな負担となってしまいます。
腎臓病の予防の為には
早期発見・早期治療、普段から生活習慣に気を付けることが大切です。CKDは、高血圧、高血糖、高脂質、そして肥満など生活習慣とかかわりの深い疾患です。生活習慣を整え、体重を適正化し、適度な運動に努めることが予防になりますし、重症化させない重要な対策となります。初期の腎機能の低下であれば、生活習慣の見直しによって改善する可能性もありますし、腎臓の機能低下を抑制するような薬物療法の選択肢も増えつつあります。症状が進行した場合、もしくは無症状でも検査値が悪化した場合には、かかりつけ医から腎臓内科の専門医を紹介してもらいましょう。